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本薩摩 陽刻竹籠編鶏牡丹図花瓶 幕末明治 苗代川系 薩摩焼 |
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本薩摩 陽刻竹籠編鶏牡丹図花瓶 幕末明治 苗代川系 薩摩焼
薩摩焼と言えば、最近では京薩摩が人気になっているようですが、言うまでもなく、鹿児島の薩摩焼がその名の通り、本家になります。京薩摩が卵豆腐のような黄色味のある陶土で造られているのに対して、本薩摩(白薩摩)は写真の通り象牙のような白い陶土で造られています。また、仁清や乾山以来、京焼が作家や窯の銘を入れるのを常としていたため、京薩摩も錦光山や帯山等の窯銘を入れたのに対して、本薩摩では銘を入れないのが普通です。これは、銘のない平戸焼や鍋島焼と同様に本薩摩も幕府や朝廷への献上品としてもともと制作されていたためではないかと思います。
薩摩焼の名を海外で高らしめたのは、日本が初めて国として公式に参加したパリ万博(慶応3年/1867年)でした。徳川幕府と薩摩藩、そして佐賀藩が参加しましたが、この中の薩摩藩は幕府とは別の独立したパビリオンを確保し、日本薩摩太守政府を名乗って参加しました。このことは欧州における幕府の信用を失墜させ、幕府と薩摩との関係を悪化させることになりました。この時に薩摩藩が出品したのが、本作のような鹿児島薩摩です。これらの作品がフランスをはじめとする欧州各国に大きな美術的衝撃を与え、ジャポニスムの潮流を引き起こす契機になったのは周知の通りです。
本作のような白薩摩には堅野系と苗代川系がありますが、銘のあるものが少なく、また、陶土や絵付けも似ているため、区別は容易ではないようです。しかし、本作は苗代川で制作されたものではないかと推測します。理由としては、沈寿官窯が保存している陽刻竹籠編牡丹図花瓶(添付写真参照)と本作の意匠が極めて似ているためです。この複雑な竹籠編みとよばれる陽刻文様は沈寿官窯が現在でも得意としている特殊な意匠です。竹籠編みの下の部分には、陽刻で大きな鶏が二羽、写実的に表現されています。更に、本作で特筆すべきは、その器形です。単なる竹籠形や竹筒形ではなく、その両方の形を一つの花瓶に取り入れている点です。中国の古い花瓶で同様の形を持つものが稀にありますが、本薩摩のみならず日本のやきものでこのような器形を持つものは初見です。
大きさは高さが41㎝、上部の開口部は幅20㎝です。
ワレ、カケ、ヒビなどの後天的な瑕疵はありません。金彩も綺麗に残されており、極めて良好な保存状態です。本作はローマで購入したものですが、イタリア美術省の審査を経て、輸出許可証を得るまでに3ケ月を要しました。
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